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2014年 ベルリンマラソン優勝
《車いす陸上とは・・・》
「レーサー」と呼ばれる軽量(約5キロ~8キロ)専用車いすを使用した障害者アスリートのための陸上競技です。 スピーディでダイナミックな展開からパラリンピックでも人気を博しています。

《車いす陸上アスリート 洞ノ上選手プロフィール》
洞ノ上 浩太(ほきのうえ こうた) 車いす陸上アスリート
所属:エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社

1974年3月30日 福岡県飯塚市生まれ
2000年3月 バイク事故にて脊髄損傷 車いす生活となる
2002年4月 知人の勧めで車いすマラソンを始める
2002年10月 大分国際車いすマラソン大会ハーフの部でデビュー
2006年 極東・南太平洋障害者スポーツ大会日本代表
    (フルマラソン金メダル獲得)
2007年 IAAF世界陸上大阪2007日本代表
    (車いす1500mエキシビジョンレース)
2008年 北京パラリンピック日本代表(5000m、フルマラソン共に5位)、
    福岡スポーツ夢大使に任命(2008~2010)、厚生労働大臣表彰受賞
2010年 10000m日本記録樹立(6月)、5000m日本記録樹立(6月)
2011年 フルマラソン日本記録樹立(6月)
2012年 ロンドンパラリンピック(フルマラソン6位)
2013年 フルマラソン日本記録更新、
世界選手権大会フルマラソン銅メダル
2014年 ボストンマラソン2位、ベルリンマラソン優勝
2015年 東京マラソン優勝
プロフ画像2                (取材:小野)

~ 京都車いす駅伝 福岡チーム4連覇! ~

小野 福岡Aチーム大会4連覇優勝おめでとうございます!タイムも良かったですね。

洞ノ上 福岡チームはベストタイムですが、コースがスタートからゴールまでワンウェイのようになっていて、 風の影響もあると思います。1区と4区の長い区間の直線がどちらも追い風だったので全体的にタイムが縮んだのだと思います。

小野 駅伝時の個人の状態、チームの状態はどうでしたか?

洞ノ上 個人の調子としては正直少し下がり気味でした。 2015年に入ってシドニーと東京に標準を絞っている感じだったので、東京マラソンが終わり、社員旅行などもあり…。 あまり練習が出来ていない状態でした。旅行明けで時間も少なく、直ぐに調子を上げられるという状態ではありませんでしたね。 でも、チームとしては皆気合を入れていて優勝を狙っていました。
5人中2人が去年と違うメンバーで新たに入っていました。緊張する中ですが、2人とも区間2位と3位の走りでチーム全体としても調子が良いと感じました。

小野 東京マラソン後の調子は4月に行なわれる世界選手権に向けて上げていくのですか?

洞ノ上 そうです。駅伝までベストな状態を持っていけと言われたら断りました(笑)  それでも90%ぐらいまでは上げていきましたが、ベストではありませんでした。

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2015年 東京マラソン
~ 車いすの選手は肩甲骨が大事 ~

大会に行くとトップの選手は身体の動きのことを話している
小野 2015年は昨年と比べて身体の状態はいかがですか?

洞ノ上 そうですね。身体は背中とか大きな筋肉を使えるようになりました。 筋力も昨年に比べてあがっているけれど、可動域もすごく良くなっているので、身体全体で使えている状態です。 今まではどうしても腕だったり、胸とか、そういうところで強引に走っていたのが今は背中とか肩甲骨とか全てその辺をしなやかに使えているようなイメージです。

小野 ホグレルのトレーニングは活きているということですか?

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ディッピングミニ 車いす仕様 (ご自宅リビングにて)
洞ノ上 活きています。簡単に言うと肩甲骨の可動域が大きくなることによって、 『動いている』というのがわかるようになったんです。腕を押した時や引いた時に肩甲骨の動きを感じるようになりました。 動きを意識することによって、背中周りや肩周りの筋肉を使えるようになったことがパフォーマンスアップの要因でもあるんじゃないかな?と思います。

小野 ホグレル開始前と後で違いはありますか?

洞ノ上 ホグレルを始める前でも背中を意識できるようにやっていこうとトレーナーからも言われていて、 それが去年(2014年)の夏でした。その時はポジションを変えたり色々と試していました。 実際に走っているところを自転車でついてもらっている荻原トレーナーに漕いでいる動作をチェックしてもらいました。 「今の良い動きですよ!!」「今はちょっと使えていないですね…」と言われている時の違いが良くわからなかったのが本音です。 「え!?どこが違うんですか??」 という感じで聞いていました。それは今思うと、肩甲骨の可動域があまり無かったから『使えている』という感覚がなかったんだと…。 それからホグレルをやるようになってからすごい肩甲骨が動くようになって、より意識が出来るようになりました。 「今、押せている!」「動いている!」というのが自分で感覚でわかる。だから、へばって動かなくなってきた時に「今、使えていないな…。」ということもわかります。 すごく背中に意識がいくようになっていますね。

小野 そのお話を聞く感じですと、車椅子の陸上選手の中で肩甲骨の動きは重要だということでしょうか?

洞ノ上 はい、重要です。速い選手に聞くとだいたい肩甲骨の話はしてますよ。 ちょっと見てたらウォーミングアップでもすごい肩甲骨を意識したトレーニングをしている選手もいます。 そういった選手は動きとか見てもすごく良い。でも、動きの良い選手は全てではなく短距離も含めほんの数名です。 京都駅伝で区間賞を獲った選手は肩甲骨がめちゃくちゃ動きますよ!気持ち悪いぐらいに(笑)。 車椅子の選手はどうしても腕とかに意識がいきがちですけど、肩甲骨の動きは次のステップとして絶対にやらなくちゃいけない場所であり、 気付きにくい場所でもあります。

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ホッキーさんとディッピングミニ
小野 なるほど。ホッキーさん(洞ノ上選手の愛称)、ホグレル結構やってらっしゃいますね!

洞ノ上 ホグレルはかなりやっていますよ!リビングにおいてあるので、朝起きてまずやります(笑)。 軽くですけど1分ほどリラックスした状態でのトレーニングです。他には寝る前だったり空いているタイミングで。 どれぐらいかわからないほどタイミングをみてトレーニングしています。

~ すごい迫力と、すごいスピード ~

間近で見た陸上競技に魅かれて直ぐに始めました!
小野 少し話が変わりますが、車いす陸上を始めた経緯について教えていただいてもよろしいでしょうか?

洞ノ上 2000年にバイク事故に遭って車椅子になりました。 その入院している時に知り合った人から紹介してもらったことがきっかけです。その人とは入院時遊びでテニスをしている仲でした。 退院してからはスポーツよりも仕事をしなくちゃいけないと思い、パソコンを勉強したり、障害者の職業訓練校(学校)に行ってました。 退院してから1年経った頃、暫くぶりにその人から連絡があり、「今、スポーツやってるんですか?」と言われ、 その人が始めた車椅子の陸上を誘われて見に行きました。初めて見た陸上はすごい迫力とスピードで、 直ぐに「やってみたい!」と。それが陸上との出会いでした。

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2014年 ベルリンマラソン
小野 陸上を始めた頃はどのように練習されていましたか?

洞ノ上 最初の頃は外で走るのが怖くて、 父親の鉄工所にルームランナーを作ってもらってそこで走っていました。 30分か40分ぐらいですけど、最初の頃は仕事から帰って来てひたすら走っていました(笑)  そして半年経って大分国際車椅子マラソンのハーフの部に出場しました。

小野 では、現在の練習はいかがですか?

洞ノ上 週に1回休みで、6日間トレーニングです。 最近ではパワーを上げる(出力を上げる)トレーニングに重点をおいて、去年の夏から取り組んでいます。 それをメインに行って、東京マラソンの前にちょっと距離をあげるためのスタミナアップのトレーニングを行ないました。

小野 車椅子のマラソンの特徴は?

洞ノ上 車椅子の競技は自転車競技と一緒で後ろについたら風の抵抗がなくてとても楽になります。 ランニングのマラソンと違ってポイントがコースによって全然変わってくるんです。上り坂、下り坂とかで仕掛けて集団を小さくしていくとか。 東京マラソンで言えば、スタート直後から5キロぐらいは下り。そこで集団を小さくしようとします。そこで小さくならなければ、 暫く続くフラットなところを『距離をこなす』というパターンで走ります。そして最後の残り7キロのアップダウンがポイントになっていくという感じです。 この前の東京マラソンで言えば、13秒差の後ろにゴールした選手との差は、残りの7キロぐらいのところから自分が仕掛けて逃げ切る。 引き離していくというレース展開でした。

~ 悲願の東京マラソン初優勝! ~

今まで2位4回、3位4回、期待してくださった人たちを待たせてしまいました
小野 東京マラソン優勝の感想をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?

洞ノ上 今まで8回チャレンジしていて、2位が4回、3位が4回と全部表彰台乗っているんですよ。 それでも1位になれないのは、何かが足りない…何だろう…と思っていました。 自分は体重が軽かったので優勝する選手は体重があるのでスタートの5キロ(下り坂)で引き離すことが、今までの作戦でした。 それでずっとやられてたんで、東京のコースは自分にとって苦手だったんです。高速キープがとても苦手で、それをもう徹底的にト
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2015年 東京マラソン優勝
レーニングしました。もうそろそろ勝てるかなと思ったのが3年ぐらい前からなんです。 それまでは完全に力の差、最初から引き離されて41キロ一人で走ったとか、そういうのがずっと続いてて、中盤になってからはパンクだったり…。 パンクは3回ぐらいありますよ!(苦笑)そういうのもあって、実力で負けた… 完全に力の勝負で負けたとういうのは1回か、2回ぐらいでした。

小野 あとちょっと…というところですね。

洞ノ上 それでやっと今回、自分もいい状態で東京に持っていって優勝することが出来ました。 今までは4月に行なわれるボストンや世界選手権に標準を絞っていました。けど、今回は応援してくださる皆様の想いに乗っかって、何とか取れた…。 本当に良かったです。優勝の後、皆様にはお待たせしましたとずっと言っていました(笑)
~ 競技に対する想いや過程は健常者と変わらない ~

そこを是非注目して欲しい
小野 車椅子陸上についてメッセージをください。

洞ノ上 今はメディアに取り上げられたとしても、ほとんど競技ではなく、障害者がケガを負って、 どん底から這い上がって、頑張っているというストーリーが多いんです。少なからずそういう部分はありますが、本当はそれだけじゃないんです。 もちろん触れられることはすごい大事なんですけど、そういうところは10%~20%ぐらいで、本質はどういうトレーニングでここまで来たとか、 ライバルの選手にこういう想いがあるとか…。だからこそ、強化してやってきている。そういう部分に目を向けてもらいたいなというのは、 陸上に留まらず他の競技の選手も共通の考えとして持っている人もいます。

小野 洞ノ上選手ご自身の目標は?

洞ノ上 直近ではロンドンで行なわれる世界選手権で銀メダル以上を取ること。 銀メダル以上はリオデジャネイロパラリンピックの日本代表が内定します。そこに最大の標準を合わせていくこと。 そしてリオデジャネイロパラリンピックに出場し金メダルを獲得することです!


洞ノ上選手、有難うございました!

洞ノ上選手のこれからのご活躍とリオデジャネイロパラリンピック出場、
金メダル獲得を応援しています!!!